子供時代の悔しさがモチベーション
そのモチベーションはどこから出てくるの?
と、よくランチにいくことり食堂ののんちゃんに聞かれて、もうそれだけで涙ぐみそうになった。四十路半ばのおばさんが子供時代のトラウマに引き込まれる。そのあまりのダサさに自分で引いた。
親の学歴コンプレックが酷かったので、成績が悪いとぶん殴られたり、箸をぶん投げられ飯は食べなくていい!と怒られたり、水風呂に沈められたり、北海道の真冬に外に放り出されたり、髪の毛を掴んで家の中を引きずり回されたりした。
スポーツを楽しむことは成績が良くなってから!というのが当たり前だったので、大好きだったソフトボール部を辞めさせられた。
そもそも親は私が何を好きだったのか知らなかった。好きなスポーツや音楽のことを知られると剥奪されると思っていて、早朝にソフトボールを片手にこっそりジョギングして、壁に向かって投球練習していた。
そんな家庭環境で勉強の意欲は湧くはずもなく、自分の部屋で体育座りをしてウーウーって唸りながら体を揺らしていた。完全に病んでるよねw
殺されるんじやないか?ってくらい親が怖かった。
親は水商売だったので夜は居ない。それでテレビの深夜番組でツールドフランスやパリダカールラリーをよく観てた。エクストリームなレースにメチャクチャ憧れた。小学5年のこと。
その年にツール・ド・北海道が開催され、そのゴールが私の住む北見市。北見のイベントで子供向けに400mのレースが開催されると知った。もう出たくて堪らなくなった。
自転車が欲しくて田舎のフリーペーパーにある譲ります欄を毎日探した。
そしたらなんと「譲りますロードバイク」を見つけた。何も考えずすぐに電話した。
電話先のお兄さんがあなたには大きすぎるけど、乗れる自転車を探してあげると言って友達から小柄な女性でも乗れるロードバイクを借りてきてくれ、一緒に練習もしてくれた。
ペダルも変えてくれた。
本当に感じのいいお兄さんで、ヤバイとか怪しい感じの人ではなかったと記憶してる。
それで小学生の部で優勝できてトロフィーをもらった。参加人数は5人くらいだったけど、物凄く嬉しかった。
母親と一緒に自転車を返しに行った。
母が菓子折りを渡しお礼を言ったら、お兄さんは「もっとたくさん練習したらいいのに」って言ってくれて、心の中で何回も首を縦に振っていたけど、母はそそくさとその場を離れ、父には内緒にしなさいと言われた。
お兄さんのアパートのドアが閉まる瞬間を今でも覚えている。
好きなことを取り上げられた子供時代の悔しさが、細胞の隅々まで染み渡ってる感覚がある。だから体を動かして好きなことをすると格段に喜びを感じるのかもしれない。
そして好きなことをしてるだけなのに、応援してもらえることに憧れている。勉強の成績がそれなりでも1位じゃないと親は褒めなかった。よくやったとか、頑張ってるねとか、寄り添いもなかった。歴史の本をパラっとめくって、こんなの1週間もあれば全部覚えられるだろ、といって本を投げつけてきた。なんでもぶん投げられた。
悔しい思いがモチベーション。
ちょっとネガティブかもしれないけど、悔しさを少しでも超えた瞬間に、自分自身に感動するからレースに出てる。
職場で「この前の大会はどうだった?」と気にかけてもらえるだけでとっても嬉しい。snsでイイネ!がつくと嬉しい。
本当に人生捨てたもんじゃない。子供の時のおかげで一生楽しめると思ってる。悔しさも悪くない。